映画『殿、利息でござる!』を見た。
騙された、完全に騙されていた、このタイトルに。
パッと見て、タイトルを読み、この映画のチラシを見ると、これは軽妙な時代劇コメディかと誰もが思うに違いない。
ところがである。
これはまったくもって大真面目な、しかも大きなテーマを持った、しかも実話であって、
人と人とが繋いできた、心に迫る、世界に誇れる日本映画だった。
僕は昨日は映画を見ようと思い、この『殿、』にするか、是枝監督の『海よりも…』にするか少し迷った。
『殿、』は無名の監督さん作品だったが、原作者が磯田道史さんだったことが引っかかって、こちらにした。
磯田さんは、この映画について、こんなコメントを寄せている。
「この奇跡の感動物語を、後世に伝えなくては」と、ボクは思いました。人類史上、近代以降はお金が中心の世の中です。「利息」を生む資本を持つ人と持たない人の格差が生じる世の中です。ボクたちは、それと、どう付き合えばよいのでしょうか。ある日、ボクに不思議な手紙がきました。「映画『武士の家計簿』を観ました。私の故郷・吉岡宿にも、涙なくしては語れない立派な人たちがいました。書いてください」。ボクは東京大学の図書館に行き、彼らの記録「国恩記」を読んでみました。読むうち、涙がポロポロこぼれ、隣の東大生に怪訝な顔をされました。「この話は『庶民の忠臣蔵』だ。この国の庶民には、すごい人々がいたものだ。若い人に伝えなくては」。そして書き上げたのが「穀田屋十三郎」(『無私の日本人』所収/文春文庫)です。すると中村義洋という映画監督が会いにきたのです。監督はいいました。「先生と私は年も近い。二人の子どもの年も同じ。同世代の責任を共有しています」。多くの言葉は要りません。監督の心事はその顔つきでわかりました。ボクはいいました。「映画も文学も、芸術は人間の生き方に響くものであってほしい。みた人の価値観を変え、世の中を少しばかり良くしてみたい。そんなことを夢想する人に映像化してほしい。あなたに会えました」。監督が撮り上げた作品をみて、ボクは鳥肌が立ちました。すごい映画でした。女優さんだけでなく、広告代理店のおじさんまで試写室で泣いていました。ただの人情映画ではありません。資本・価値・貨幣・家族・共同体・権威・支配…いろんな問題を問うた大きな作品です。この映画を観てください。そして感じたことを人に語ってください。ぼんやりとした何かを変えるために。
映画を見終わった後、このコメントを読めば、その意味はもっと心に届くはずだ。
今日は、この原作本『無私の日本人』を買って来た。