2016年6月24日金曜日

『和太鼓トーク齊富2016』終演に寄せて、その参



拝啓、齊藤栄一 様




新緑が燃えるあの日、車は下の駐車場に停め、少し小高い丘まで歩くことにしました。

太陽がとても眩しくて陽射しも強く、木蔭が深く揺れていましたね。

その小径を歩いていた時、海が突然広がりました。


歩みを止めた二人。



夏が近いことを知らせるように輝く海の煌めき、

その存在をそっと伝えたかったのか、ゆるやかに髪を撫でた風、

あなたの声が聞こえて、振り向けば、



まだ蝉も鳴いていなかったはずなのに一瞬、大きく蝉時雨が聞こえたかと思うと、時間が止まっていた。

潮の匂いと、あなたの匂い。



あなたの胸の鼓動が私の胸を鳴らした時、

私は生きているんだ、と強く実感した。




 ………私たちが初めて会った日のことは、こんな風に何度でもいつでも思い出すことができる。






あれからずいぶんと年月が過ぎて、

あなたの誕生日をお祝いしていたあの夜、あんなことが起こるなんて………



一番驚いたのは私です。

そして一番大変だったのも私です。

そして不謹慎に思われるかもしれませんが、一番嬉しかったのも私です。



快楽と苦難は、時に同居し交差します。



あなたは、輝いていました。


何者にも犯されることのない輝きに満ちて、この今に打ち込んでいました。

私も同じです。

それ以上、何を望むことがあったでしょうか?





ほんとうに、ありがとうございました。


そして、お疲れさまでした。

できることなら、ゆっくりとお休み下さい。





また、もし出逢える日が再び訪れたのなら、その時はその声をそっと聞かせて下さい。


ドンドドストスト ドンドドストスト ドンドドストスト ドンドドン…………






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※公演をご覧になった方にはお判りだと思いますが、あの人がどうしても一言(一言ではないですが)齊藤さんにお礼を伝えたいというので、こちらに手紙を掲載させて頂きました。



写真/青柳健二