新緑が燃えるあの日、車は下の駐車場に停め、少し小高い丘まで歩くことにしました。
太陽がとても眩しくて陽射しも強く、木蔭が深く揺れていましたね。
その小径を歩いていた時、海が突然広がりました。
歩みを止めた二人。
夏が近いことを知らせるように輝く海の煌めき、
その存在をそっと伝えたかったのか、ゆるやかに髪を撫でた風、
あなたの声が聞こえて、振り向けば、
まだ蝉も鳴いていなかったはずなのに一瞬、大きく蝉時雨が聞こえたかと思うと、時間が止まっていた。
潮の匂いと、あなたの匂い。
あなたの胸の鼓動が私の胸を鳴らした時、
私は生きているんだ、と強く実感した。
………私たちが初めて会った日のことは、こんな風に何度でもいつでも思い出すことができる。
あれからずいぶんと年月が過ぎて、
あなたの誕生日をお祝いしていたあの夜、あんなことが起こるなんて………
一番驚いたのは私です。
そして一番大変だったのも私です。
そして不謹慎に思われるかもしれませんが、一番嬉しかったのも私です。
快楽と苦難は、時に同居し交差します。
あなたは、輝いていました。
何者にも犯されることのない輝きに満ちて、この今に打ち込んでいました。
私も同じです。
それ以上、何を望むことがあったでしょうか?
ほんとうに、ありがとうございました。
そして、お疲れさまでした。
できることなら、ゆっくりとお休み下さい。
また、もし出逢える日が再び訪れたのなら、その時はその声をそっと聞かせて下さい。
ドンドドストスト ドンドドストスト ドンドドストスト ドンドドン…………
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※公演をご覧になった方にはお判りだと思いますが、あの人がどうしても一言(一言ではないですが)齊藤さんにお礼を伝えたいというので、こちらに手紙を掲載させて頂きました。
写真/青柳健二
写真/青柳健二